私の場合、噛むと奥歯が痛む原因は、痛んでいる歯そのものではありませんでした。すべての始まりは、そのさらに奥に潜んでいた親知らずだったのです。数年前から、右下の最も奥の歯茎に時々違和感がありましたが、特に痛みもなかったので放置していました。歯科医院でも「横向きに埋まっているので、症状がなければ様子を見ましょう」と言われていたのです。しかし、一ヶ月ほど前から、親知らずの一つ手前の奥歯で物を噛むと、ズキッとした痛みが走るようになりました。最初は気のせいかと思いましたが、痛みは徐々に強くなり、食事をするのが苦痛になってきました。不思議なことに、痛む歯自体は鏡で見ても何ともなく、冷たいものがしみるわけでもありません。不安に思い、改めて歯科医院で精密なレントゲンを撮ってもらうことにしました。そこで映し出された画像を見て、私は愕然としました。横向きに埋まっていた親知らずが、手前の奥歯の根元をじわじわと押し続け、その結果、押されていた奥歯の根元部分が吸収されて溶けてしまっていたのです。さらに、親知らずとの隙間に細菌が入り込み、大きな虫歯までできていました。手前の歯が痛んでいたのは、親知らずからの静かな攻撃による悲鳴だったのです。歯科医師からは、残念ながら手前の奥歯は保存が難しく、親知らずと一緒に抜歯する必要があると告げられました。もっと早く、違和感を覚えた時点で積極的に対処していれば、大切な奥歯を失わずに済んだかもしれない。そう思うと、後悔の念に駆られました。抜歯手術は大変でしたが、原因が取り除かれた今、痛みはありません。この経験から、口の中の小さなサインも見逃さず、少しでもおかしいと感じたら専門家に相談することの重要性を痛感しています。