抜歯後の回復をスムーズに進める上で、最も重要なミッションは「血餅を死守すること」に尽きます。では、具体的にどのような行為が、このデリケートな血餅を剥がれ落とすリスクを高めてしまうのでしょうか。その理由と共に、絶対に避けるべき行動を詳しく見ていきましょう。まず、最もやってはいけないのが「強いうがい」です。抜歯後は口の中を清潔に保ちたい気持ちはわかりますが、ブクブクと激しくうがいをすると、その水圧が直接血餅を洗い流してしまいます。うがいは、水を口に含んで静かに吐き出す程度に留めてください。次に危険なのが、ストローで飲み物を吸う行為です。一見すると患部に触れないので安全そうに思えますが、実は口の中に強い「陰圧」を生じさせます。この吸い上げる力が、掃除機のように血餅をスポッと引き抜いてしまうのです。麺類をすする行為も同様の理由で非常に危険です。喫煙も絶対に避けるべきです。タバコを吸う行為自体がストローと同じく陰圧を生じさせますし、ニコチンの作用で血管が収縮し、傷口への血流が悪くなります。これにより、血餅の質が悪くなったり、治癒が遅れたりする原因となります。血行を過度に良くする行為もNGです。長時間の入浴、サウナ、激しい運動、そして飲酒。これらは全身の血流を促進し、再出血のリスクを高めます。血が再び流れ出すと、せっかく固まりかけた血餅が押し流されてしまう可能性があります。そして、最もやってしまいがちなのが、舌や指で患部を触ることです。気になって仕方がないのは当然ですが、物理的に触れてしまうと、簡単に剥がれてしまいます。これらの禁止事項は、抜歯後、少なくとも24時間から48時間は厳密に、その後も一週間程度は意識して守ることが推奨されます。少しの我慢が、後の激痛を避けるための最善の策なのです。
血餅を守るために絶対にしてはいけないこと