突然現れては消える唇の腫れクインケ浮腫とは
ある日突然、何の前触れもなく唇、特に下唇がパンパンに腫れ上がり、数時間から2、3日で跡形もなく消えてしまう。痛みもかゆみもほとんどない。もし、あなたがこのような不思議な症状を繰り返しているなら、それは「クインケ浮腫」かもしれません。クインケ浮腫は「血管性浮腫」とも呼ばれる病気で、皮膚の深い部分にある血管から血液の成分(血漿)が漏れ出し、一時的にむくみ(浮腫)を引き起こすものです。アレルギー反応の一種と考えられていますが、一般的なじんましんのように皮膚の表面が赤く盛り上がるのではなく、より深い組織がぼってりと腫れ上がるのが特徴です。唇やまぶたなど、皮膚の柔らかい部分によく現れます。原因は完全には解明されていませんが、ストレス、疲労、特定の薬剤(降圧薬など)、物理的な圧迫などが引き金になると考えられています。食物アレルギーのように特定の原因物質がはっきりしないケースも多く、いつ、なぜ起こるのか予測が難しいのがこの病気の厄介なところです。通常、痛みやかゆみはなく、数日で自然に消えるため、命に別状はありません。しかし、まれに喉の奥(喉頭)に浮腫が起こることがあり、その場合は気道が狭くなって呼吸困難を引き起こす危険性があるため、注意が必要です。もし唇の腫れと共に、息苦しさや声のかすれを感じた場合は、直ちに救急医療機関を受診してください。治療としては、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服が中心となります。原因不明の唇の腫れを繰り返す場合は、一度アレルギー科や皮膚科で相談し、クインケ浮腫の可能性について診断してもらうと良いでしょう。