昨日まで何ともなかったのに、突然襲ってくる歯の激しい痛み。それは食事や仕事、睡眠さえも妨げるほどの強烈な苦痛となり、私たちの平穏な日常を一瞬にして奪い去ります。この急な歯の痛みの背景には、一体どのような原因が隠されているのでしょうか。最も多くの人が想像するのは、やはり虫歯でしょう。最初は小さな虫歯でも、それが進行して歯の内部にある神経、すなわち歯髄にまで達すると、何の前触れもなく激しい痛みを引き起こす「歯髄炎」という状態になります。これは、炎症によって歯の内部の圧力が急激に高まるために起こるもので、ズキズキと脈打つような痛みが特徴です。また、見た目には虫歯がなくても、過去に治療した詰め物や被せ物の下で、気づかないうちに虫歯が再発しているケースも少なくありません。さらに、歯そのものではなく、歯を支える周囲の組織に問題が起きている場合もあります。歯周病が重症化し、歯茎が腫れて膿が溜まると、急な痛みや歯が浮いたような感覚を覚えることがあります。日々の歯ぎしりや食いしばりの癖によって、歯の根元にある歯根膜というクッション役の組織が炎症を起こし、噛むたびに痛むようになることもあります。時には、歯に微細なひびが入っていたり、親知らずが隣の歯を押して炎症を起こしていたりすることも原因となります。このように、突然の歯の痛みの原因は一つではありません。いずれにせよ、それは放置して自然に治るものではなく、体が発している緊急事態のサインなのです。痛みを我慢せず、一刻も早く専門家である歯科医師の診断を仰ぐことが、苦痛から解放され、大切な歯を守るための唯一の道と言えるでしょう。