歯に急な痛みが走ると、誰もがまず虫歯を疑いますが、実は痛みの原因はそれだけではありません。歯科医院で検査をしても虫歯が見つからないのに、なぜか歯が痛むというケースは意外と多いのです。その代表的な原因の一つが「知覚過敏」です。これは、歯のエナメル質が削れたり、歯周病で歯茎が下がったりして、内側の象牙質が露出してしまうことで起こります。象牙質には神経につながる無数の細い管が通っており、冷たいものや熱いもの、歯ブラシの毛先などの刺激が、この管を通じて直接神経に伝わり、キーンとする一過性の鋭い痛みを感じさせるのです。また、自分では気づきにくい「歯ぎしり」や「食いしばり」も、急な痛みを引き起こす犯人になり得ます。睡眠中や日中に無意識のうちに歯に過大な力がかかり続けると、歯そのものや、歯を支える歯根膜という組織にダメージが蓄積します。これにより、特定の歯が浮いたように感じられたり、噛んだ時に鈍い痛みを覚えたりすることがあります。時には、歯に目に見えないほどのひびが入ってしまうこともあります。さらに、歯とは全く関係のない場所に原因があることもあります。例えば、上の奥歯が痛む場合、「副鼻腔炎(蓄膿症)」の可能性も考えられます。上の歯の根の先端は、副鼻腔という鼻の空洞と近接しているため、副鼻腔が炎症を起こすと、その圧力が歯の神経を圧迫し、あたかも歯が痛いかのように感じられるのです。この場合、歯の痛みだけでなく、鼻詰まりや頭痛を伴うことが多いのが特徴です。このように、歯の痛みの原因は多岐にわたります。自己判断で「虫歯じゃないから大丈夫」と放置せず、専門家による正確な診断を受けることが、問題解決への第一歩となります。