2025年10月
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歯が原因で下唇が腫れる?見過ごされがちな関係
下唇が腫れると、多くの人は皮膚の問題やアレルギーを疑いますが、実は「歯」が原因となっているケースも少なくありません。口の中は、皮膚科領域と歯科領域が密接に関係している場所なのです。歯科的な原因としてまず考えられるのが、下の前歯の根の先に膿が溜まる病気、「根尖性歯周炎」です。虫歯が進行して神経が死んでしまったり、過去に神経の治療をした歯が再び感染したりすると、歯の根の先端部分の骨の中に膿の袋ができます。この膿の袋が大きくなると、炎症が周囲に波及し、歯茎だけでなく、下唇や顎の辺りまで腫れてくることがあるのです。この場合、唇の表面に原因があるわけではないので、見た目には傷や発疹がなく、押すと歯の根元あたりに痛みを感じるのが特徴です。また、不適合な詰め物や被せ物、あるいは歯の矯正装置が、慢性的に下唇の粘膜を刺激し続けることで、炎症や潰瘍ができて腫れてしまうこともあります。特定の場所だけが繰り返し腫れたり、口内炎ができたりする場合は、その向かい側にある歯に問題がないかチェックする必要があります。さらに、下の親知らずが横向きに生えていて、その周囲の歯茎が腫れる「智歯周囲炎」の炎症が広がり、下唇まで腫れが及ぶことも考えられます。このように、唇のトラブルだと思っていたものが、実は口の中の深い部分にある歯の問題に起因していることは珍しくないのです。皮膚科で薬をもらっても改善しない、原因不明の唇の腫れが続くといった場合は、一度、歯科医院や口腔外科でレントゲン撮影を含めた精密な検査を受けてみることをお勧めします。