2025年10月
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古い銀歯の下で起きていた静かなる崩壊
急な歯の痛みは、必ずしも新しい問題から生じるとは限りません。むしろ、何年も前に治療を終え、すっかり安心しきっていた歯にこそ、危険が潜んでいることがあります。私自身がそれを体験したのは、四十歳を過ぎた頃でした。ある日、夕食にカレーライスを食べていると、左上の奥歯にズキンと響くような痛みを感じました。その歯は、十年以上前に虫歯治療で銀歯を被せた場所です。それ以来、何の問題もなかったので、気のせいだろうと思いました。しかし翌日、温かいコーヒーを飲んだ際に、再び同じような痛みに襲われました。それからは、温かいものや冷たいものが触れるたびに痛むようになり、しまいには何もしていなくても鈍い痛みが続くようになってしまったのです。鏡で見ても銀歯はしっかりついているように見え、外見上の異常はありません。不思議に思いながら歯科医院を受診し、レントゲンを撮ってもらうと、歯科医師から衝撃の事実を告げられました。銀歯と歯の間に、ごくわずかな隙間ができており、そこから細菌が侵入して、銀歯の下で虫歯が大きく進行していたのです。セメントの経年劣化や、噛み合わせの力で、気づかないうちに封鎖性が失われていたのでした。外側からは見えないため、発見が遅れ、虫歯はすでに神経の近くまで達していました。これが急な痛みの原因だったのです。結局、古い銀歯を外し、神経の治療を行うという大掛かりな再治療が必要になりました。もし、あの時「古い銀歯だから大丈夫」と放置していたら、歯を失うことになっていたかもしれません。この経験は、一度治療した歯も永遠ではないという現実を私に突きつけました。口の中は常に変化しており、定期的なプロの目でチェックしてもらうことの重要性を、身をもって知ることになったのです。