2025年10月
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銀歯の痛みに潜むガルバニー電流の不思議
銀歯の入った歯で、時々ピリッ、チクッとした金属的な痛みや違和感を覚えることはありませんか。アルミホイルをうっかり噛んでしまった時のような、あの嫌な感覚です。もし、口の中に銀歯以外にも別の種類の金属(例えば、他の歯に詰められたアマルガムや、金属床の入れ歯など)がある場合、その痛みの原因は「ガルバニー電流」かもしれません。ガルバニー電流とは、唾液という電解液の中で、イオン化傾向の異なる二種類以上の金属が接触した際に発生する、ごく微弱な電流のことです。これは、理科の実験で習った、レモンに銅板と亜鉛板を刺して電池を作るのと同じ原理が、口の中で起こっている状態です。保険診療で使われる銀歯(金銀パラジウム合金)と、古い治療で使われたアマルガム(水銀を主成分とする合金)は、特に電位差が大きいため、ガルバニー電流が発生しやすい組み合わせと言われています。この微弱な電流が歯の神経を刺激し、瞬間的な痛みや、金属の味、あるいは舌がしびれるような違和感を引き起こすのです。通常、この症状は一過性で、時間の経過とともにおさまることが多いですが、人によっては慢性的な痛みや不快感の原因となることもあります。また、電流の発生は金属の溶け出しを促進させ、金属アレルギーのリスクを高める可能性も指摘されています。もし、原因不明のピリッとした痛みに悩んでいるなら、一度、ご自身の口の中にどのような金属が入っているかを確認してみるのも良いかもしれません。診断は歯科医師でなければできませんが、心当たりがある場合は、診察の際にその旨を伝えてみましょう。対策としては、原因となっている金属のどちらか、あるいは両方を、セラミックやレジンなどの非金属の材料に取り替えることが最も効果的です。