お得な人生を送る歯医者大公開！

差し歯が痛む原因として、最も頻繁に遭遇するのが、歯の根の先で起きている、静かなる感染、「根尖性歯周炎（こんせんせいししゅうえん）」です。これは、差し歯の土台となっている、歯の根（歯根）の先端に、細菌感染によって、「膿の袋」ができてしまう病気です。なぜ、治療が終わったはずの歯の根に、膿が溜まってしまうのでしょうか。そのメカニズムは、差し歯が立てられるまでの、治療過程に遡ります。差し歯は、多くの場合、虫歯が深くまで進行し、歯の神経を抜く「根管治療」を終えた歯に、装着されます。根管治療とは、歯の根の中にある、感染した神経や血管を取り除き、徹底的に消毒した後、再び細菌が侵入しないように、薬で密閉する治療です。しかし、歯の根管は、非常に細く、複雑に枝分かれしているため、現在の技術をもってしても、内部の細菌を、100%完全に、無菌化することは、極めて困難です。治療時に、わずかに残った細菌が、長い年月をかけて、再び増殖したり、あるいは、被せ物と歯の隙間から、新たに細菌が侵入したりすると、感染が再発します。細菌は、歯の根の先端にある、小さな穴から、外側の顎の骨の中へと、じわじわと勢力を広げ、そこで、体の免疫細胞と、激しい戦いを始めます。この戦いの結果、生じた、細菌や白血球の死骸が、膿となって、根の先に溜まるのです。この、根尖性歯周炎の痛みには、特徴があります。普段は、ほとんど症状がないか、噛むと少し響く程度の、軽い違和感しかありません。しかし、風邪をひいたり、疲労が溜まったりして、体の抵抗力が落ちた時に、この病巣が、急に「急性化」し、牙を剥きます。何もしなくても、ズキズキと脈打つように痛み、噛むと、歯が浮き上がったような、激しい痛みに襲われます。歯茎が、ぷくっと腫れたり、そこから膿が出てきたりすることもあります。この場合、痛み止めを飲んでも、一時しのぎにしかなりません。治療法は、差し歯と、その下の土台を、一度、全て外して、再び、歯の根の中をきれいにする「再根管治療」が必要となります。これは、非常に根気のいる、難しい治療ですが、歯を抜かずに救うためには、避けては通れない道なのです。